+第28話・楽園からの追放者+


<インターミッション・???>

ギリアム「……」

レーツェル「よく来てくれた、友よ」

ゼンガー「……久しぶりだな、ギリアム・イェーガー」

ギリアム「ゼンガー……。なるほど、ここがお前達の隠れ家ということか」

レーツェル「そうだ。私とゼンガーは公の場に出られる立場ではないのでな」

ギリアム「フッ……よく言う」

レーツェル「……ささやかだが、食事を用異した。我々の再会を
       祝して乾杯しよう」

ギリアム「再会、か……」

ゼンガー「ここにカイ少佐がいれば、旧教導隊のメンバーが揃ったのだがな」

ギリアム「L5戦役の後、彼にも声はかけたさ。しかし、現場に
      いる方がいいと言われてね」

レーツェル「だからこそ、我々はこうして動くことが出来る。
       そうだろう、ギリアム?」

ギリアム「ああ」

レーツェル「さあ、乾杯だ。今は亡きカーウァイ隊長、テンペスト・ホーカー……」
       「そして、ハガネにいるカイ少佐に……我らの仲間達に」

ゼンガー「乾杯」

ギリアム「乾杯」

レーツェル「……本日のメインディッシュはスズキのポワレだ。
       食材は先程ゼンガーが釣ってきた」

ギリアム「ほう、それは楽しみだ。ところで、ゼンガー……お前は確か」

ゼンガー「心配いらん。これはウーロン茶だ」

レーツェル「それも福建鉄観音、ジーピン……入手に少々苦労した」

ギリアム「ふふ、相変わらずの拘りだな」

レーツェル「それで、ギリアム……君のメインディッシュについて
       聞かせてもらおうか?」

ギリアム「……」
      「……お前達も知っての通り、連邦政府と連邦軍上層部は
      グラスマン派に掌握された」

レーツェル「今の地球圏に必要なのは神の盾ではなく、鎌……その流れは
       抑えきれなかったか」

ギリアム「ああ。紆余曲折があったとは言え、結果的にビアン博士と
      マイヤー総帥の目的は達成されたことになる」

ゼンガー「……」

レーツェル「……」

ギリアム「ミッドクリッド大統領は自らの意思で辞任……その後は
      グライエンに委ねられる」

レーツェル「大統領は何と?」

ギリアム「先程のお前と同じことを言い、自分の派閥を説得したそうだ」
      「そのおかげで体制はさしたる混乱もなく、グライエン派へ
      移行している」

レーツェル「……無駄な血を流すのを避けたか。彼らしいな」

ギリアム「異星人の脅威にさらされている今という状況では
      やむを得ないことかも知れん……」
      「だが、問題はその後だ。利権に目がくらんだ物達や、
      イスルギを始めとする戦争商人……」
      「そして、『影』が地球圏を貪り尽くすだろう」

ゼンガー「影……?」

レーツェル「それがお前の本命か」

ギリアム「そうだ。彼らが本格的な動きを見せ始めた……
      俺はそれを止めねばならん」

ゼンガー「もしや、その連中は俺の写し身を送り込んできた……?」

ギリアム「ああ。この世に在らざる兵器を使う者達……
      その名をシャドウミラーと言う」

レーツェル「シャドウミラー……」

ゼンガー「何者なのだ、奴らは?」

ギリアム「……」

ゼンガー「ギリアム?」

レーツェル「言えぬ理由があるのだな」

ギリアム「すまん。今はまだ……」

ゼンガー「……」

ギリアム「……シャドウミラーの動きは掴みにくい……」
      「そして、俺も彼らに動きを掴まれるわけにはいかなかった」
      「チャンスは今しかない。
      彼らが表に現れ、単独で行動している今しかないのだ」

レーツェル「それで、我々と行動を共にすることが出来ないと言うのか?」

ギリアム「ああ。シャドウミラー本隊がハガネやヒリュウと接触したおかげで、
      おおよその位置がつかめた……」
      「だから、俺は行く。
      俺という存在が引き起こした事態を収拾するために」

レーツェル「……」

ゼンガー「……」

レーツェル(……クロガネの改修にはもう少し時間がかかる。
       それに、ビアン博士の遺産も……)

ゼンガー「レーツェル、すぐに参式の出撃準備を頼む」

ギリアム「!」

レーツェル「了解した。私も付き合おう」

ギリアム「ゼンガー……レーツェル……」

ゼンガー「お前ほどの男が倒さねばならぬと言う相手だ。
      放っておくわけにはいくまい」

レーツェル「我々もまたハガネやヒリュウ改の影となりて動く者……」
       「同じ影同士、相応しい対決かも知れんな」

ギリアム「二人とも……すまない」

ゼンガー「構わん」

レーツェル「そうと決まれば、残りの皿は取っておくとしよう。
       ……敵の位置が確定し次第、出るぞ」

ゼンガー「承知した」



<3PP目>

アクセル「……どうした、W17? お前の性能はその程度か?」

ラミア(やはり、こちらの方が圧倒的に不利……)
    (だが、何としてでもここを切り抜けなければ……)

(ブザー音)

アクセル「!」

ヴィンデル「何だ?」

リー「こちらへ急速接近中の物体あり」
   「数は3。反応から見て、特機とパーソナルトルーパーだと思われます」

ヴィンデル「ハガネの手の者か?」

(ゲシュペンスト、ヒュッケバインMk-Vトロンベ、グルンガスト参式出現)

ラミア「あれは……!」

リー「ヒュッケバインMk-Vとグルンガスト参式、それに……」

アクセル「黒いゲシュペンストだと?」

ギリアム「間違いない、あの機体はマスタッシュマンだ」

レーツェル「マスタッシュマン……。オペレーションSRWの最中に
       現れた所属不明機のコードか」

ギリアム「……ああ。そして、シャドウミラーの機体だ」

(通信音)

ギリアム「応答せよ、シャドウミラー隊指揮官……
      ヴィンデル・マウザー大佐」

ヴィンデル「何者だ?」

ギリアム「ヘリオス……と言えばわかるだろう」

ヴィンデル「!!」

レモン「ホ、ホントに!?」

アクセル「顔はともかく、あの声は……!」

ギリアム「……」

ヴィンデル「ふ、ふふふ……久しぶりだな、ヘリオス……
       ヘリオス・オリンパス」
       「それがお前の素顔か?」

ギリアム「……」

ゼンガー(ヘリオス・オリンパスだと?)

レーツェル(ギリアムのことか?)

ギリアム「ヴィンデル大佐……再びお前と会うことになるとはな」

ヴィンデル「ああ、貴様が残したシステムXNのおかげだ」
      「やはり、アギュイエウスの扉はファーストジャンパーである
       貴様に通じていたようだな?」

ギリアム「……」

レモン「随分と捜したのよ、あなたを」

ギリアム「お互いにな」

ヴィンデル「いつ気づいた?」

ギリアム「マスタッシュマンがこちら側に現れたことを知った時……」
      「いや、お前達が初めてテスラ研に来た時だ」

レモン「あらら、最初からバレバレだったってこと?」

ギリアム「テスラ研でシステムXNの作動に目処がついた頃……」
      「真っ先にプロジェクトチームへ接触して来たのはDCではなく、
      お前達シャドウミラーだったからな」

ヴィンデル「故に疑問を持ったか」

ギリアム「だが、今やそれは確信に変わった」
      「システムXNはお前達に制御できるものではない」
      「その機能は限定されているとは言え、下手に
      使用すれば世界の因果律が狂う」
      「アギュイエウス……そしてリュケイオスの扉は
      二度と開かれてはならないのだ」

レモン「ふふ、確かにね。あなたですらこっちに飛ばしちゃうぐらいの
    不安定さだもの」

ギリアム「……」

レモン「おかげで私達も多くの仲間を失ったわ……」

アクセル「……」

ギリアム「システムXNはこの世界に存在してはならない。
      そして……お前達もな」

ラミア「……」

ヴィンデル「ふん、貴様に言えることか」

ギリアム「だからこそ、俺はこの世界で待っていた……」
      「システムXNを悪用する者を……追放者達を。
      その存在を抹消するために」

ヴィンデル「……ヘリオスよ、我らに降るのなら今の内だぞ」

ギリアム「断る」

ヴィンデル「ならば、力づくでも従わせるまでだ」

レーツェル「来るか……!」

アクセル「ここで決着を着ける。貴様ら全員まとめてな」

ラミア「出来るとお思いですか?
    ……私だけならまだしも、教導隊のメンバーが相手だと言うのに」

レーツェル「彼女は……」

ゼンガー「キョウスケの部下だ。しかし……」

ギリアム「Wシリーズ……君は我々の味方なのか?」

ラミア「信じてもらえるのなら」

ギリアム「……いいだろう。ゼンガー、レーツェル、異存は?」

ゼンガー「ない」

レーツェル「行動でその証を立てるのであれば」

ラミア「……了解」

アクセル「甘い……。その甘さが新しい世界の妨げになると
      わからんようだな、お前には」

ラミア「今まではわかろうともしなかっただけです」
    「私は指令さえこなしていれば良かった。
    ただ……その味を知ってしまった」
    「それだけです、アクセル隊長」

アクセル「ふん……ならば、お前はこの世界をどうする気だ?」
     「戦いを終わらせ、平和をもたらすつもりだとでも言うのか?」

ラミア「……」

ヴィンデル「……平和は何も生み出さん。ただ世界を腐敗させていくのみ」
       「そして、闘争を忘れた者達は兵士を……軍を切り捨てる。
       我らの存在を否定するのだ」

ラミア「わかっておられないようですね、ヴィンデル様」

ヴィンデル「何だと?」

ラミア「戦いに他人を巻き込み、殺すことでしか存在を見出せない……
    その後に何が残りますか?」
    「生まれるものと失われるもの……
    それは等価値ではない。彼らの中の一人もそう言っていたはず」

ヴィンデル「貴様……」

レモン「……知恵のリンゴを食べたアダムとイブは……楽園から
    追放されたのよ、W17」

ラミア「承知です。
    ならば……私は自分の足で次の楽園を探しましょう……」



<初期敵15機撃破>

ヴィンデル「フッ、しぶとい連中だ」

レモン「こっちでも教導隊の名は伊達じゃないってことね」
    「どうする? 連邦軍の追撃部隊もこっちへ向かってきてるみたいだけど」

ヴィンデル(システムXNはまだ完全ではない……)
       (そして、戦力の立て直しも図らねばならん。
       ここでの無理は禁物か)
       「リー、補給作業は?」

リー「完了しています」

ヴィンデル「では、エルアインス隊を出撃させろ」

リー「はっ」

(エルアインス隊出現)

レーツェル「! こちらの足を止める気か!?」

ギリアム「ヴィンデル・マウザー! 逃がしはせん!」

ヴィンデル「ヘリオス……例えファーストジャンパーのお前で
       あっても、我らを止めることは出来ん」

ギリアム「……!」

ヴィンデル「……レモン、システムXNを使うぞ。通常転移だ」

レモン「え? あれの修理はまだ終わっていないわ。
     今の状態じゃ、距離が稼げないわよ?」

ヴィンデル「構わん。この場から離脱できればいい」

レモン「でも、私達がずっと捜していたヘリオスを
     放っておいていいの?」

ヴィンデル「万が一にも、ここでシステムXNを
       これ以上損傷させるわけにはいかん」

レモン「そうね……。コアを手に入れても、システムが
     壊れちゃ意味ないものね」

ヴィンデル「最悪の場合、奴なしでもあの機能は発動できる。
       ……我々がこちらへ来たようにな」

レモン「その分、確実性には欠けるけどね」

ヴィンデル「……」
       「……アクセル」

アクセル「先に行け。決着はまだついていない」

レモン「とか言っちゃって……
    ベーオウルフが来るのを待ってるんじゃない?」

アクセル「……後で合流地点を教えろ」

レモン「ふう……わかったわ」

ギリアム「待て!!」

レモン「じゃあね、ヘリオスさん」

ヴィンデル「また会おう。例の機能を回復させた後でな」

(シロガネ撤退)

レーツェル「反応が消えた……! 追跡は……不可能か」

ギリアム「くっ、ここまで来て……!」

アクセル「まだ終わりではないぞ、ヘリオス」

ギリアム「……お前達は知るまい」

アクセル「?」

ギリアム「この世界は我々という異物を受け入れながら、
      奇跡的なバランスで保たれている」

アクセル「何……?」

ギリアム「本来なら、崩壊していてもおかしくはない。
      あり得ないのだ、このような世界は」

アクセル「ならば、何故おれ達は……この世界は存在し続けている?」

ギリアム「何かの力が……何者かの意思が作用しているのだ」

アクセル「何者かの……だと?」

ギリアム「さながらこの世界はその者が作り出した実験室のフラスコ……」
      「その実験の結果が出た時、我々の存在は………」

アクセル「だから、干渉をやめろと言うのか?」

ギリアム「……そうだ」

アクセル「もう遅い。この世界を創り出した者が何であろうと、
      おれ達を導いた者が誰であろうと……」
     「おれはおれの意思で、おれの信じるもののために戦っている」

ラミア「……」

ゼンガー「ならば、ここは退けん。我らもまた己の信念のために……」
     「この世界を存続させるために戦っている……!」

アクセル「いいだろう。
      どちらの方法が正しいか、ここでその答えを出すまでだ!」
     「リミット解除! ソウルゲインよ、お前の力を
      今一度奴らに示せ!!」

(アクセルにド根性・熱血・気合が掛かる)

ゼンガー「相手にとって不足なし! いざ尋常に勝負ッ!!」

(ゼンガーに熱血・気迫が掛かる)



<上より1ターン後PP>

レーツェル「! 来たか……!」

(味方増援出撃)

エクセレン「わお! ここにいたのはやっぱりボス達だったのね!」

ゼンガー「エクセレン……それに、キョウスケ達か」

キョウスケ「ゼンガー少佐……シロガネは?」

ゼンガー「……すでに転移した」

ラミア「追跡は不可能……私のミスだ」

キョウスケ「!」

ブリット「ラ、ラミアさん!!」

マサキ「お前、無事だったのか!?」

ラミア「……見ての通りだ」

リューネ「あ、あの爆発で……?」

エクセレン「ラミアちゃん……今までどこで何やってたの?
       私達、あなたが死んじゃったと……」

カチーナ「何を言ってやがる! 元いた所に戻ってただけだろうが!」

ラミア「それは……」

レーツェル「経緯はどうあれ、今の彼女は我々の味方だ。
       私が保証する」

ツグミ「レーツェルさん……!」

ライ「エルザム……兄さん」

レーツェル「勘違いしてもらっては困る。
       私はレーツェル・ファインシュメッカー……お前の兄ではない」

ライ「……!」

リュウセイ「いや、そんなこと言われたってありゃどう見ても……」

タスク「あ、あの旦那だよなあ」

レーツェル「……」

ライ「兄さん……あなたの言葉を信用しろと?」

レーツェル「その気になれば、彼女はいつでも我らを討つことが出来た」
      「それに……この状況下で我々を陥れようと
      言うのも不自然ではないか?」

ライ「……」

カチーナ「今まであたしらを欺いてきた奴だぜ? それを簡単に……」

ゼンガー「彼女の戦に迷いはない。結果がそれを証明している」

ギリアム「……私も同感だ」

カチーナ「……」

ラッセル「ちゅ、中尉……」

カチーナ「ヘッ、あのメンツにそこまで言われちゃ信じるしかねえか」

レオナ「カチーナ中尉……」

カチーナ「今に始まったこっちゃねえってことだろ? ……わかってるさ」

エクセレン「んじゃま、一件落着……その他諸々、まとめてどど〜んと
       水に流すってことで」

キョウスケ「後は……奴か」

アクセル「フッ……待っていたぞ、ベーオウルフ」

キョウスケ「アクセル・アルマー……この間の借りを返させてもらうぞ」

アクセル「ふん……撃ち貫けると思うな、このおれを」

キョウスケ「賭けるか? ……チップは互いの命だ」

アクセル「いいだろう……来い!」



<アフターミッション・ブリーフィングルーム>

ダイテツ「……ゼンガー少佐達が
      言ったことは正しかったようだな、ラミア・ラヴレス」

ラミア「……私を信じて下さってありがとうございます」

ダイテツ「では、ここにいる皆に事実を話してもらおう」

ラミア「わかりました」

ギリアム「……」

ラミア「何からお話しましょうか」

ダイテツ「シャドウミラーとは何者か……からでいこう」

ラミア「彼らは……地球連邦軍特殊任務実行部隊」

カイ「……特務隊のことか? だが、名称が違うぞ」

ショーン「ふむ……。シャドウミラーなどという特務隊は
     聞いたことがありませんな」

ラミア「しかし……向こう側の連邦軍には存在していたのです」

タスク「む、向こう側って……何のことなんスか?」

ラミア「こことは違う世界のことだ」

レフィーナ「違う……世界?」

ラミア「はい……今からそれについてご説明しましょう」
    「……新西暦160年代から盛んになったスペースコロニーの
    独立自治権獲得運動、ID4……」
    「それは地球政府とコロニーの間に大きな確執を生みました」
    「コロニーの台頭を恐れた地球連邦政府はID4を弾圧……」
    「連邦とコロニーの対立は激化し、ついには機動兵器を使用した
    テロ事件が数多く発生しました」
    「そして、ある事件によりコロニーの命運は
    大きく変わることになったのです」

レーツェル「もしや、それはエルピスで起きた……?」

ラミア「はい。地球至上主義のテロリストが
    スペースコロニー・エルピスへ潜入……」
    「内部で毒ガスを使用し、住人の大半を死に至らしめた事件です」

レオナ「どういうこと……!? あの事件はそのような結末では……」

ラミア「犠牲者の中には
    連邦宇宙軍総指令マイヤー・V・ブランシュタイン……」
    「その長男エルザムと彼の妻であるカトライアも含まれていました」

レーツェル「な……!」

ゼンガー「何だと!?」

レオナ「そんな……」

ライ「義姉上だけでなく、父と兄までもが……?」

エクセレン「ちょ、ちょい待ち!
       じゃあ、そこにいるレーツェルさんは何なの!?」

アラド「ま、まさか、幽霊!?」

レーツェル「悪いが……私の足はご覧の通りだ」

ヴィレッタ「もしや、ラミアが言う向こう側とは……?」

ギリアム「そう……。並行世界、パラレルワールドだ」

カチーナ「パラレルワールド!?」

ギリアム「……世界は常に分岐の可能性を持っている……」
      「我々が存在するこの世界とは別の……並行した世界」
      「極めて近く、そして限りなく遠い世界……
      それがパラレルワールドだ」

ラミア「はい……。我々はその中の一つからやってきました」

ヴィレッタ「……」

ラミア「そして、私がいた世界とこの世界では、
    多くの事柄が異なっています」

ライ「では、エルピス事件の後は?」

ラミア「コロニーの治安維持と
    ID4の弾圧が強化され……結局、コロニーが独立することはなかった」
    「そして、DC戦争が勃発……。我々連邦軍は苦戦の末、ビアン博士を
    打ち倒し……勝利を収めた」
    「その後、ビアン博士が示唆した異星人の脅威を重く見た連邦軍は……」
    「地球圏防衛のため、大幅な軍備増強を敢行……」
    「その結果、多種多様な機動兵器が開発された」

リョウト「多種多様?」

ラミア「そう。Z&R社のヴァルキュリアシリーズ、FI社のアサルト・ドラグーン……」
    「イスルギ重工のリオンシリーズ、マオ社のパーソナルトルーパーなどだ」

イルム「最初の2社は聞いたことがないメーカーだな……」

ラミア「そして、その中でも、数多く生産され、連邦軍の
    主力兵器となったのが……」
    「マオ社のゲシュペンストMk-Uとイスルギ社のリオンだ」

テツヤ「ゲシュペンストMk-Uが数多く生産……?
     どれぐらい作られたんだ?」

ラミア「およそ3000機」

テツヤ「3000……!? こちらと桁が違いすぎるぞ!」

イルム「なるほど……。
     シャドウミラーのゲシュペンストMk-Uの謎が解けたぜ」
    「あれはお前達が向こう側から持ってきた機体だったんだな?」

ラミア「そうです」

イルム「そして、こっちのゲシュペンストMk-Uと仕様が違うのは、
     向こうで改良が重ねられたから、か」

ラミア「はい。そして、それはエルアインスにも同じことが言えます」

リョウト「エルアインス……?」

ラミア「向こう側でのアルブレードの正式名称……」
    「その名の通り、R-1の量産型……ゲシュペンストMk-Uに次ぐ
    主力機としてマオ社が開発した物だ」

リョウト「ゲシュペンストの次……?」

ラトゥーニ「なら、量産型のヒュッケバインMk-Uは……?」

ラミア「向こうでのヒュッケバインシリーズは……」
    「1号機……008Rの暴走事故によって、開発計画の
    見直しが軍から要求され……」
    「その後も何機か試作機が作られたようだが、
    量産には至っていない」

アヤ「……向こうでのSRXはどうなっているの? R-1が
   量産されているということは……」

ラミア「何度か開発が中断されたようだが……」
    「侵略行動を開始した異星人との戦闘に投入するため、
    最終的にはロールアウトしている」

ライ「その異星人とは……エアロゲイターか?」

ラミア「違う。インスペクターだ」

マサキ「何!? あいつらが先に来たってのか!?」

ラミア「そうだ」

ブリット「そ、それでラミアさんはエアロゲイターのことを
     知らなかったのか……」

ヴィレッタ「……メテオ3は向こうの世界でも落下したのか?」

ラミア「いえ……」

ヴィレッタ「では、SRXの動力源はトロニウムではないと?」

ラミア「データを見た限りでは……おそらくこちら側と同じかと」

リュウセイ「何だって!? メテオ3が落ちてきてねえのに、
       何でトロニウムがあるんだ!?」

ラミア「……それについてのデータはない」

ヴィレッタ(何者かがトロニウムを地球にもたらしたと言うのか……?)

キョウスケ「……では、最大の疑問に答えてもらおう」

ラミア「……」

キョウスケ「シャドウミラーがこちらの世界へ来た理由は?
       そして、その方法は?」

ラミア「理由……。私はよく知りませんが、データはあります」
    「緩やかな腐敗……。平和という安息を隠れ蓑に連邦は……」
    「いや、世界は少しづつおかしくなっていったと言います」
    「ヴィンデル様はその世界を憂い、クーデターを起こしました」

アイビス「絶えず争っている世界を作るために?」

ラミア「そう、戦争は終結してはならない……その後に待つのは
    平和という名の腐敗……」
    「だが、闘争が日常である世界なら、それは永遠に起こることはない」

ツグミ「そんなの……理論上のものに過ぎないわ」

ラミア「……理論上と言うよりは、確率の問題だ」
    「闘争を日常とする世界であれば、腐敗が起こる可能性は低い」

キョウスケ「……なら、何故それをこちら側で実証しようとする?」

エクセレン「無責任な言い方かも知れないけど……
       向こうでやってよって感じ?」

カチーナ「ああ、まったくだぜ」

ラミア「……シャドウミラーがこちら側に来た理由……
    それはある部隊に敗れたからです」

エクセレン「その部隊……もしかして、ヴィンデルって人が言ってた……?」

ラミア「はい。ゲシュペンストMk-Vを隊長機とした連邦軍特殊鎮圧部隊、
    ベーオウルブズ……」
    「隊長はキョウスケ・ナンブ大尉」

キョウスケ「……」

タスク「な〜る、それでアクセルはアルトアイゼンをゲシュペンストMk-V……」
    「キョウスケ中尉をベーオウルフって呼んでたわけか」

カチーナ「……あの野郎がしつこくキョウスケを狙って
      きやがった理由がわかったぜ」
     「大方、向こうのキョウスケ大尉殿にこっぴどくやられたんだろ?」

ラミア「データでは互角だった……と聞いています」
    「しかし、ベーオウルブズは今のハガネやヒリュウ改と
    ほぼ同じ戦力を持ち……」
    「結果、シャドウミラーは彼らに追い詰められてしまったのです」
    「そして、ヴィンデル様が最後に選択した手段は……」

ヴィレッタ「……こちら側への転移というわけか」

ラミア「はい」

キョウスケ「ならば、その方法は?」

ギリアム「……それについては俺が説明しよう」

キョウスケ「!?」

カイ「ギリアム……何故、お前が?」

ギリアム「それは……」
      「俺もシャドウミラーと同じく、向こう側から来た人間だからです」

カイ「!!」

カチーナ「な、何だとォ!?」

ラーダ「じゃあ、少佐はこの世界の人間ではないと……!?」

ギリアム「……ああ」

レーツェル(やはり、あの時の話は……そういうことだったのか)

ヴィレッタ「……」

ギリアム「向こうでの俺は……テスラ研でシステムXNという装置の
      研究に従事していた」

ツグミ「システムXN……?」

ギリアム「空間・次元転移装置のことだ。
      2基存在し、それぞれ『アギュイエウス』、『リュケイオス』と言う」
      「だが、俺はアギュイエウスの機動実験に失敗し……」
      「単身、この世界へ飛ばされてしまった」

ツグミ「……」

レーツェル「では、ヘリオス・オリンパスという名は……」

ギリアム「向こうの世界での俺の名だ」
      「そして、元の世界へ戻れなくなった俺は
      ギリアム・イェーガーと名乗り……」
      「この世界で生きる決意をした。
      その後はカイ少佐やゼンガー、レーツェルも知っての通りだ」

ゼンガー「……」

ギリアム「お前達……いや、ここにいる者達には今まで真実を話さず、
      すまなかったと思っている……」
      「だが、後続者が現れる可能性がある以上……俺は素性を
      明かすわけにはいかなかった」

ゼンガー「後続者……それはシステムXNを使って転移してくる者のことか?」

ギリアム「そうだ。アギュイエウスとリュケイオスが
      向こう側に残っている以上……」
      「俺と同じようにこの世界への転移を試みる者は必ずいる……」
      「だが、もしそれがテスラ研の
      人間ではなく、システムXNの悪用を目論む者だったら……」
      「その者は俺を捜し出し、己の目的のために利用しようとするだろう」

ヴィレッタ「利用?」

ギリアム「そうだ。アギュイエウスは作動の確実性を向上させるため、
      俺とリンクするように作られていた」
      「つまり、俺はシステムXN・アギュイエウスの
      コアとも言える存在なのだ」

ゼンガー「それで、お前は……」

ギリアム「ああ。こちら側で素性を隠し、次なる転移者を待ち続けた。
      そして、その結果現れたのが……」

カイ「シャドウミラーだったというわけか」

ギリアム「ええ。ただ……俺と彼らの転移タイミングには
      大きな差があったようです」

ラミア「そう……。シャドウミラー隊がテスラ研を占拠し、転移したのは……」
    「ファーストジャンパーのヘリオス……いえ、ギリアム少佐が
    転移してから約2年後のことでした」

ダイテツ「……転移を行ったシャドウミラー隊の規模は?」

ラミア「連邦軍より奪取したASK系、RGC系の試作機や
    新主力機のエルアインス……」
    「テスラ研で入手したSRG系、EG系の機体……」
    「そして、シャドウミラーが元々所有していたゲシュペンストやリオン……」
    「フュルギアやソルプレッサなどを合わせて2096機」

レフィーナ「そ、そんなに!?」

ラミア「はい。ヴィンデル大佐に賛同する他部隊の兵士やDC残党も
    加わっておりましたので」
    「しかし……実際にたどり着いたのは502機」

クスハ「え……!? 何故なんですか?」

ラミア「同一世界内での空間転移とは異なり、時空転移は
    不安定かつ不確定要素が多い」
    「例えるなら、濁流の中で蜘蛛の糸を辿るようなものだ」
    「そのため、部隊の者の大半は時空のねじれに
    巻き込まれて消滅した」
    「私の言語回路がやられたのも、この時の影響だ」

クスハ「げ、言語回路……!?」

ツグミ「も、もしかして、あなたは……!?」

ラミア「私の正式名称はW17……」
    「指令を忠実に実行するためだけに存在する……
    隊長の言葉を借りれば、人形だ」

クスハ「……!」

ツグミ「つまり、人造人間……」

ラミア「そう。シャドウミラー隊ではWシリーズと呼ばれている」
    「その中でも優秀な性能を持ち、特殊任務を
    遂行する者がナンバーズ……」
    「そして、私は17番目にロールアウトした最新型。故にW17。
    今後はそう呼んでもらって構わない」

ラトゥーニ「……」

アラド「な、名前がナンバー……!
    それでいいんスか、ラミアさん!? いいわけないでしょう!!」

ラミア「……そうだったな、アラド・バランガ」

ゼンガー「……もしや、ウォーダン・ユミルもお前と同じく……?」

ラミア「はい。名称はW15……」
    「向こう側のゼンガー・ゾンボルト少佐のデータを
    基にして作られたナンバーズです」

ゼンガー「……奴が乗る特機は?」

ラミア「向こう側で入手したグルンガスト参式をこちらで
    改造したものだと思われます」

レーツェル「しかし、彼らは何故ゼンガーの写し身を……?」

ラミア「……ベーオウルブズの対抗手段とするためです」

ゼンガー「向こう側の俺は?」

ラミア「データによれば、アースクレイドル内乱後、
    行方不明……となっています」

ゼンガー「……そうか」

キョウスケ「……そして、ヴィンデルはアクセルやラミア、ウォーダンらと共に……」
       「向こう側で果たせなかった目的を、こちら側で果たすつもりか」

ラミア「……はい」

ブリット「……永遠の闘争……。
     戦い続けることでバランスを取る世界なんて……!」

ツグミ「戦いの度に技術は進歩していった……確かに、
    それは間違っていないけど……」

エクセレン「戦いを望む者にとっては理想の世界かも知れない……」
       「でも、そうでない人達にとっては地獄……ね」

キョウスケ「ああ。シャドウミラーはそれがわかっていない」

ギリアム「だから、何としても彼らを阻止し、彼らが持つ
      システムXNを破壊せねばならん」

ラミア「……その通りです」

ダイテツ「……」

ラミア「ダイテツ艦長、私の話は……以上で終わりです」

ダイテツ「……」

ショーン「……ダイテツ中佐、これからの彼女の処置は?」

ダイテツ「現状維持だ」

ラミア「しかし、私は……」

ダイテツ「素性と過去はどうあれ、今のお前の意思は我らと
      同じなのだろう?」

ラミア「……はい」

ダイテツ「ならば、それでいい。……他に異論のある者は?」

ライ「……」

キョウスケ「……」

ギリアム「……」

カチーナ「……二度あることは三度ある。四度目もあっていいんじゃねえか?」

ラミア「カチーナ中尉……」

エクセレン「……お帰りなさい、ラミアちゃん」

ラミア「エクセ姉様……」

エクセレン「またこれで美人3姉妹が揃ったわね」

タスク「何スか、それ? 初耳ッスけど……」

エクセレン「んふふ、ヴィレッタお姉様と私……ラミアちゃんの3姉妹よん」

タスク「あ、な〜る」

カチーナ「自分で言ってりゃ世話ねえぜ」

ラミア「……」

ヴィレッタ「ラミア……これからの戦いで、あなたの存在は
      なくてはならないものとなる」

ブリット「そうです、ラミアさん。だから、俺達に力を貸して下さい」

タスク「それに、ラミアさんみてえなボインちゃんが
    いなくなっちゃうのは寂しいし」

レオナ「タスク?」

タスク「じょ、冗談でございますです、レオナ様」

ラミア「……素直に受け取っておこう」
    「悪くない……そう、悪くない気分だ」




□Back□